前立腺がん
【はじめに】前立腺がんは、高齢になればなるほど増えてくる病気です。日本でも食生活の変化と高齢化のため、患者数が急増しており、現在前立腺がんの罹患患者数は、男性で1位となっております。食生活の変化とは高脂肪、高たんぱくの欧米化したことが影響していると言われています。前立腺がんは初期には症状が現れにくく、早期発見が重要となり、血中PSA(前立腺特異抗原)値の測定が有用です。前立腺がんの進行による症状が出現すると排尿障害、血尿、骨転移による疼痛を自覚します。
【診断】
PSA値はの正常値は、4ng/ml以下ですが前立腺がんだけでなく、前立腺肥大症、前立腺炎などでも高値になります。PSA測定は、50歳以上の男性に対する会社の健診や地域の健診に含まれていることがあります。4ng/mlを超えると前立腺がんを疑う必要がありますが、前立腺肥大症、前立腺炎でも高値を示すことがあります。PSA値が4ng/ml以上で前立腺がんを疑う場合は、肛門から超音波を挿入しながら生検針で組織採取(病理検査)を行い確定診断を行います。採取した組織は病理診断医により顕微鏡で診断され、悪性度をGleason scoreで点数化します。
前立腺がんの悪性度と癌の広がり(ステージング)に関しては、MR、CT、骨シンチグラフィーを行います。以上の検査を組み合わせて、前立腺がんの状態をリスク分類(低リスク、中リスク、高リスク)で判断し、治療選択、予後予測を行います。
【治療】
前立腺がんの治療は、前述の病理検査、広がりなどで決まってきますが治療選択がたくさんあり、年齢、仕事や生活状況、ご希望などの多くの要素を総合的に判断し、患者さんとご家族にご説明し、十分にご理解していただき、最終決定します。
治療法には、監視療法、手術、放射線治療、投薬(ホルモン療法、化学療法、骨転移治療薬など)があります。
監視療法:病理検査の結果、がんの悪性度が低い、小さいなどのリスク分類で低い時などは、積極的な治療は行わず、経過観察をすることもあります。
手術:75-80歳未満のご年齢でがんが前立腺の中だけにある場合には、根治的前立腺全摘除術を開腹、腹腔鏡、ロボット支援のいずれかで行います。前立腺を包んでいる被膜ごと摘出し、膀胱と尿道を吻合しますが、尿失禁、勃起障害などがみられることがあります。
放射線治療:前立腺がんの悪性度、進行度により内分泌療法(ホルモン療法)を併用しながら行う事もあります。放射線治療には、主に三次元原体照射(3D-CRT)、強度変調放射線治療(IMRT)、小線源療法(ブラキセラピー)があり、3D-CRTとIMRTは、装置の上に乗り、約1、2か月間外来通院で、体の外から放射線を前立腺に照射します。ブラキセラピーは、放射線を放出する医療用線源を数十個前立腺に永久的に埋め込み、中から治療を行うものです。
内分泌療法(ホルモン療法):前立腺がんは男性ホルモンの影響が非常に高く、ブロックすることで前立腺がんの進展を抑えることができます。しかし、手術、放射線治療とは異なり、根治させることは難しく、数年で効果が弱くなり、再燃することもあります。そのように初回内分泌療法に対し、抵抗するようになった前立腺がんを去勢抵抗性前立腺がんと言います。そのため、状況により手術や放射線治療を組み合わせることで効果を上げることもします。基本的には、1~数か月に1度の注射(LH-RHアゴニスト、アンタゴニスト)と内服薬(抗アンドロゲン剤、去勢抵抗前立腺がんに対する新規内分泌治療薬)を続けます。
抗がん剤(化学療法):去勢抵抗性前立腺がんに対して有効性を示す化学療法(ドセタキセル、カバジタキセル)が使用されています。
骨転移治療薬:前立腺がんは進行してくると骨転移を起こしやすくなり、疼痛、骨折などの問題を引き起こすため、ゾレドロン酸、デノスマブといった薬を投与することがあります。